アメリカ編~第42日目

12月8日(金)

今日もサウジ組はにぎやかだ。

率直に認めなければいけないが、自分はアラブ人には偏見があった(し、まだある)と思う。自分にとってアラブ人はバックトゥザフューチャーで出てくるドクがプルトニウムをちょろまかしたテロリストや、9.11とその後のイラク戦争でのイメージ、そして大学生の時に旅行で行ったエジプトでのぼったくりやさんざんな対応のイメージだった。

今の職場の半数以上はおそらくアラブ人で、しかもその大多数をサウジアラビアが占めている。彼らはアメリカでの生活を楽しみ、さまざまなことを考え、彼らの世界を広げている。彼らは英語の読み書きは得意ではないが、話し始めたら止まらない。アメリカ人に言わせると「アラビア語は流れるように話すから英語を学んでも話すのはとても得意、文法は適当だけど」とのことで、それは確かに納得できるような気もするのだけど、彼らに主張したい核、意見があるからだとも思う。

この日、(第1次)湾岸戦争の話題になり、アメリカ人同僚が「クウェートイラクが侵攻してきたときロクに抵抗しなかった」という話をした(正確にはそういう内容の学習教材を紹介した)。これにサウジ人たちが猛反発した。クウェートは奇襲を受けたんだ、首長の一族の一人は抵抗して宮殿で戦死している、兄弟のような隣人に侵攻するなんて想像できるか?などなど。

アメリカ人も負けてはいない。彼女は当時空軍兵士であり、本国に残留していたものの当時の経過をよく覚えているのだろう。ウクライナ侵攻のようにイラク軍は何か月も国境付近で演習をして部隊を集結させていたのに?実際、Wikipediaを見ると当時のクウェートの対応には批判的だ。

ja.wikipedia.org

「大学で国際政治を学んだあなたはどう思う?」と振られたが、「えぇっ、そりゃどっちが挙げている話も矛盾なく成立するし、そりゃ受ける印象や見方の違いはあるでしょう…」と答えるしかできなかった。さすが日本人、玉虫色は得意である。

その後、サウジ人たちは「戦争に行ってつらい思いをした人たち」のことを口々に語ってくれた。彼らは自分の主張を強く持っているから雄弁なのだとよく分かった。