アメリカ編~第22日目

11月18日(土)。

今日は朝から職場の研修バスツアーである。

行先は、サンアントニオから車で1時間ほど離れた町、フレデリクスバーグ。このドイツ人移民の町で19世紀末に生まれたのが、チェスター・ウィリアム・ニミッツ。彼は後に第2次世界大戦の太平洋戦線において、アメリカ海軍太平洋艦隊司令長官として対日戦の指揮を執ることになる。マッカーサーのような派手さはないが、太平洋における作戦を着実に進めていき、渡洋侵攻を成功させた彼の功績は偉大だ。戦後、彼の功績をたたえて、生誕の地に国立博物館が設立された。

National Museum of the Pacific War

展示は網羅的かつ公平、そして見ごたえのあるものだった。開戦経緯の説明は1815年にまでさかのぼる。

時間が限られていたのと根気が続かなかったので、とてもすべての説明を読むことはできなかったのだが、日本がなぜ大陸権益にこだわったのか、1文目の”Triple Intervention”(三国干渉)まで説明してくれるとは。

ニミッツ東郷平八郎に面識があるのだから当然言及されるだろうと思っていたが、思ったより大きな扱いで驚いた。人種問題にも言及がある。

そして出てくる甲標的。でも甲標的は昔毎日のように見てたからなあ…。説明員は当然「捕虜第一号」酒巻少尉について説明。ご本人はここを訪れたそうだ。この中に入って敵港湾に突入する厳しさが想像できるだろうか。

当然これは出てくる。B-25によるいわゆる「ドゥーリトル空襲」。ウクライナ人も知っていた。「確か映画で見た気がする」。うん、その映画にはスプルーアンス級駆逐艦が出てきませんでしたか?

初期の苦しい戦いを象徴するかのようなF4Fワイルドキャット。

南太平洋戦線について、さらにいえばマッカーサーとの確執についても言及がある。靖国神社遊就館に陸海軍の対立について言及があるか?(行ったことないので知らない)

そう、この時に某国の同僚から「日本は負けた歴史だからこのことは教えてないだろう」と言われ、「いやそんなことはない、こんなに詳しくはないが」とややムキになって返したのだが、よく考えたらどうだろうか。自分はオタクだからもちろん知ってはいるが、一般の人はいわゆる「平和教育」で習う程度なのではないだろうか。よく言われるように学校教育で近現代史の扱いは小さい。なぜ太平洋戦争に突入し、なぜ負けたのか、そういう言われると説明に窮するか大雑把なことしか言えないのが現状ではないか。

…まあ、大半のアメリカ人もそうか…。

思わず撮ってしまった。米軍は第2次大戦末期には自動誘導爆弾を実用化していた(アクティブレーダーホーミング)。

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一方日本は…

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Smart VS Baka。残酷だが、あまりにも対照的というしかない。

「海軍」は旗だろうか、手ぬぐいだろうか?

品がないが、まあ戦争中はありがちよね。

米軍パイロットの所持品。フライトコンピューターだ。

ガダルカナルの戦いのコーナーで、軽巡洋艦の艦橋の再現。舵輪あんなのなんだ。

瑞鶴の沈没。当然それに至るレイテ沖海戦の経過、ハルゼーの突進や栗田艦隊の迷走、サマール沖の奮戦も解説がある。

そうですね、パーフェクトな勝利ですね、というしかない、潜水艦戦の解説。太平洋戦争を語るうえでこれは外せない。

将官艇(Admiral's Barge)。ニミッツが使っていたものだそう。

そして、この博物館のいちばんレアなやつがこの水上戦闘機「強風」である。侵攻時、飛行場が完成するまでの間制空権を獲得するために作られた専用の水上機という、世界的に見ても珍しい機体だ。もちろんだからといって活躍できたというわけではないのだが。レアではあるが、この機体も含め3機現存するそう。いずれもアメリカ。

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潜水艦のセイル。手前には第2次大戦中の戦没潜水艦が”Eternal Patrol”として紹介されている。

没後、ニミッツの名は新型原子力潜水艦の1番艦に付けられ、現在も現役である(退役は近い)。1/72というド迫力。

ミュージアムショップにて。家永三郎かよ…。

酒巻少尉の甲標的が「波19」であるとされているが、そうなんだっけ?

博物館から200mほど歩いたところには保存兵器中心の展示コーナーがある。これはサーチライトかな。

人力でかつげることで有名な(?)16インチ砲弾。

米軍のPT魚雷艇。手前の柱の陰にハーケンクロイツが描かれているとおり、地中海で使われたものだそうだ。

TBMアベンジャー雷撃機

このあたりは集合時間が迫っていたため駆け足になってしまっていた。実はたまたま火炎放射器のデモンストレーションをやっていたらしいが、見たかったといえばそうだが、見たら見たできっと微妙な気持ちになってしまうわね。

Outpost: The Combat Assault Team | National Museum of the Pacific War

車窓から。ドイツ人の町らしく、石造りの町並みは美しかった。うーん、暇があればもう1回来たいかな。